骨のうたう

戦死やあわれ
兵隊の死ぬるやあわれ
とおい他国で ひょんと死ぬるや

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金がきたら

金がきたら
ゲタを買おう
そう人のゲタばかり かりてはいられまい

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ぼくが 帰るとまもなく
まだ八月に入ったばかりなのに
海はその表情を変えはじめた

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愚の旗

人は、彼のことを神童とよんだ
小学校の先生のとけない算術の問題を、

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冬に死す

蛾が
静かに障子の桟(さん)からおちたよ
死んだんだね

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銭湯へゆく
麦畑をとおる
オムレツ形の月

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あきらめろと云うが

かの女を 人は あきらめろと云うが
おんなを 人は かの女だけでないと云うが

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空をかける

蛍光を発して
夜の都の空をかける
風に指がちぎれ 鼻がとびさる

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日本がみえない

この空気
この音
オレは日本に帰ってきた

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ぼくもいくさに征くのだけれど

街はいくさがたりであふれ
どこへいっても征くはなし かったはなし

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望 郷

あの街 あの道 あの角で
おれや おまえや あいつらと
あんなことして ああいうて

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兵営の桜

十月の兵営に
桜が咲いた
ちっぽけな樹に

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夜通し風がふいていた

上衣のボタンもかけずに
厠(かわや)へつつ走って行った
厠のまん中に

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南からの種子

南から帰った兵隊が
おれたちの班に入ってきた
マラリヤがなおるまでいるのだそうな

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演 習

ずぶぬれの機銃分隊であった
ぼくの戦帽は小さすぎてすぐおちそうになった
ぼくだけあごひもをしめておった

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行 軍

白い小学校の運動場で
おれたちはひるやすみした
枝のないポプラの列の影がながい

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行軍二

あの山を越えるとき
おれたちは機関車のように 蒸気ばんでおった

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射撃について

松の木山に銃声がいくつもとどろいた
山の上に赤い旗がうごかない雲を待っている

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三ツ星さん

私の好きな三ツ星さん
私はいつも元気です
いつもで私を見て下さい

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わかれ

みんなして酒をのんだ
新宿は、雨であった
雨にきづかないふりして

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宇治橋

ながいきをしたい
いつかくる宇治橋のわたりぞめを
おれたちでやりたい

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うたうたいは

うたうたいは うたうたえと きみ言えど 口おもく うたうたえず。

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五月のように

なんのために
ともかく 生きている
ともかく

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よく生きてきたと思う

よく生きてきたと思う
よく生かしてくれたと思う
ボクのような人間を
よく生かしてくれたと思う

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鈍走記

生まれてきたから、死ぬまで生きてやるのだ。
ただそれだけだ。

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