行軍二

あの山を越えるとき
おれたちは機関車のように 蒸気ばんでおった
だまりこんで がつんがつんと あるいておった
急に風がきて 白い雪のかたまりを なげてよこした
水筒の水は 口の中をガラスのように刺した
あの山を越えるとき
おれたちは焼ける樟樹(くすのきき)であった
いま あの山は まっ黒で
その上に ぎりぎりと オリオン星がかがやいている
じっとこうして背嚢(はいのう)にもたれて
地べたの上でいきづいていた(い)ものだ
またもや風がきて雨をおれたちの顔にかけていった