<竹内浩三の伝記的著作>

中井利亮編『愚の旗-竹内浩三作品集』 (1956 松島こう 私家版発行) 

竹内浩三の戦死後10年が過ぎて、姉の松島こうは竹内浩三の親友であった中井利亮に依頼して、竹内浩三の初めての作品集を私家版で200部作った。この本が竹内浩三を世に知らしめるための第一歩になるのだが、一般には販売されなかった。

小林察編『竹内浩三全集』 
第1巻「骨のうたう」(1984新評論)
第2巻「筑波日記」 (1984新評論)

〇戦後40年の年に「竹内浩三全集」全2巻が刊行された。編者の小林察は、元NHKディレクターで親友の西川勉の突然の死去により竹内浩三と出会い、共に西川の友人であった新評論の藤原良雄の協力を得て出版となった。第2巻の巻末に、<竹内浩三の思い出>として、阪本楠彦「中学生の筆禍―竹内のこと」、野村一雄「追憶」掲載。

小林察編『竹内浩三作品集』(1989 新評論

『愚の旗 戦死やあわれ』(1992 日本図書センター 「戦争と平和」市民の記録②)

〇1956年に私家版として作られた『愚の旗』の内容に、筑波日記などを一部追加して発行されている。巻末の解説文は千早耿一郎。このシリーズは戦争体験の記録を収録して全20巻が刊行された。

松島新編『愚の旗』(1998 成星出版)

〇松島信による斬新なデザインでまとめられた竹内浩三の作品集。THE BOOMの宮沢和史の寄稿文が巻末に収録されている。

小林察編『竹内浩三全作品集 日本が見えない』(2001 藤原書店)

〇発行直前の7月に竹内浩三のドイツ語の教科書から偶然に作品「日本が見えない」などが発見されたため新たに収録され、タイトルにそれを使って10月に発行された。大きな話題となった第2回目の全集で「筑波日記」の写真やマンガ等収録点数多数。

小林察編『戦死やあわれ』(2003 岩波書店 岩波現代文庫)

〇竹内浩三の初めての文庫版作品集。詩とそれに関連する手紙や日記などを組み合わせて、読む者の理解、解釈を広げる編集となっている。この本の編集中に、竹内浩三の蔵書である詩集『培養土』の余白に書かれた「宇治橋」「わかれ」などが発見されて、掲載されている。

よしだみどり編『竹内浩三楽書き詩集 まんがのよろづや』(2005 藤原書店)

〇よしだみどりは竹内浩三の詩集に挿絵を依頼されたことから、彼のマンガやイラストの魅力を知ってもらおうと、自ら色付けをして読みやすく楽しい本に仕上げた。

よしだみどり編『竹内浩三集』(2006 藤原書店)

〇竹内浩三の詩と彼のマンガ・イラストを組み合わせた魅力的な詩集で、竹内浩三を初めて読む人、若い人が手に取りやすい1冊。

小林察編『竹内浩三詩文集―戦争に断ち切られた青春』(2008 風媒社 風の道文庫)

〇名古屋の出版社から出されたこの本は、名前の付けられた章ごとに小林察の分かりやすい解説がついて、読者の理解を助け竹内浩三への関心を広げる1冊になっている。

小林察編『定本竹内浩三全集 戦死やあはれ』(2012 藤原書店)

〇2002年に北川冬彦編 詩集『培養土』から発見された「宇治橋」などの詩も収録して、小林察による3回目の竹内浩三全集が定本として藤原書店より発行された。

復刻版『愚の旗―竹内浩三作品集』(2018 伊勢文化舎)

〇1956年200部限定の私家版として作られた『愚の旗』は一般にはほとんど目にすることができなかった。それが2021年伊勢市において「愚の旗」復刻制作委員会と(有)伊勢文化舎により、活版印刷による詩の印刷や、表紙、見返し紙などを再現して復刻発行された。復刻版には藤田明・渡邊正也両氏による解説と略年譜等が追加されている。

<竹内浩三の伝記的著作>

桑島玄二『純白の花負いて-詩人竹内浩三の“筑波日記”』(1978 理論社)

〇戦争に協力して戦意高揚のための短歌、詩を作った歌人、詩人に対して、戦後一貫してそれを厳しく批判し続けた桑島玄二は、それらと対比させて、この本で竹内浩三の詩やことばをその純粋さ、潔癖さから高く評価した。

小林察『恋人の眼や ひょんと消ゆるや』(1985 新評論)

〇1984年新評論から第1回目の「竹内浩三全集」全2巻を出版した小林察は、翌年すぐにこの本を出して、自分が竹内浩三に感じる魅力を存分に語っている。友人、西川勉の死による竹内浩三との出会いから、全集編集の中での出来事等を、竹内浩三のマンガイラストも多く掲載して紹介している。

たかとう匡子『竹内浩三をめぐる旅』(1994 編集工房ノア)

〇神戸在住の詩人、たかとう匡子が竹内浩三の詩に出会い、何度か伊勢を訪ねて、まだ存命であったゆかりの人を訪ねたりして、その詩や竹内浩三をめぐる人々について描いた1冊。

稲泉連『ぼくもいくさに征くのだけれど-竹内浩三の詩と死』(2004 中央公論新社)

〇22歳の稲泉は新聞の書評欄から竹内浩三の詩「日本が見えない」に出会う。そこから『竹内浩三全作品集』を読み、竹内浩三を知るために伊勢市や松阪市を幾度も訪ね、多くの人から話を聞いてゆき、最後にはフィリピンのバギオの地にもでかけた。それらを若い真摯な視点でまとめたこの本で第36回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。現在では逝去した人も多く、貴重な証言録となっている。中公文庫で入手できる。

<竹内浩三を取り上げた書籍・雑誌>

松阪市編『ふるさとの風やー松阪市戦没兵士の手紙集』(1966 三一書房)

足立巻一『戦死やアワレ-無名兵士の記録』(1978 新潮社)

西川勉遺稿・追悼文集『戦死やあわれ』(1983 新評論)

宮沢和史『詞人から詩人へ』(2000 河出書房新社)

中井万知子編『ヤマトヒメ・ラインを走るー中井利亮遺稿集』(2003制作・暮らしの手帖社)

出久根達郎『百貌百言』(2001 文春新書)

アーサー・ビナード『日本の名詩、英語でおどる』(2007 みすず書房)

アーサー・ビナード『もしも、詩があったら』 (2015 光文社新書)

古川佳子『母の(おも)い、大待(おおまつ)(よい)(くさ) よき人々との出会い』 (2018 白澤社)

「伊勢人」2007 8/9 No.158盛夏号 特集竹内浩三が見たNIPPON

<竹内浩三を扱った番組等>  一部

1978年8月10日  NHKラジオ夏期特集番組「戦死やあわれ」(構成・西川勉)放送

2007年7月  NHK BSハイビジョン「日本が見えない~戦時下の詩と夢・竹内浩三」放送